先日、国連フォーラムで、たまたま今、私が勉強していることについての勉強会があり、メーリング・リスト宛てに報告を書く機会がありました。ブログ用に少し訂正したものを、下記に引用しておきます。こんなことを勉強しています、のご報告がてら。
尚、「国連フォーラム」というのは、国連を中心とした情報・意見交換を目的とするフォーラムで、私も幹事を務めています。メーリング・リストを中心に、NYでの勉強会や、 フィールドからのレポートなども行っています。(今後は東京での勉強会も企画中のよう。)幹事会では、国連邦人職員会や外務省国連代表部の方々のリーダー シップのもと、我々コロンビア大(SIPA)やニューヨーク大(NYU)の学生が、運営のお手伝いをしています。ニューヨーク・ワシントン・ジュネーブ・ ロンドン・バングラディッシュ・東京を跨いで、日々やりとりし、立ち上げから約1年ちょっとの現在、メーリング・リスト参加者は約700人ほどになったよ うです。主に、国連邦人職員、外務省・JICA関係者、学生・NGO・メディア関係者などが多いようですが、MLですのでご関心があればどなたでも登録で きます。もし宜しければ、お気軽にご参加くださいな。(登録はこちらから)また、ワシントンDC開発フォーラムの姉妹版でもあるので、ご関心のある方は、そちらもご参考にされてみてください。
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先日、世界銀行NY事務所にて、社会開発局 紛争予防・復興支援ユニットのK氏による、「紛争と開発」と題する勉強会が開催されました。大変興味深い勉強会でしたので、皆さまにご報告いたします。
今回の勉強会では初めに、講師から用意された45分の世銀作ドキュメンタリー(英語)「Nation Zero」を見た後に、30分ほどお話いただき、質疑応答に移りました。このドキュメンタリーは、昨年5月に世銀から出された報告書「戦乱下の罠(Breaking the Conflict Trap: Civil War and Development Policy)」の日本語版作成に合わせ、日本信託基金で作られたもので、つい先々週、BBCでも放送されたそうです。
ド キュメンタリーは、紛争と開発の相関関係について、アフガニスタン、コロンビア、ボスニア、ルワンダの事例を取り上げてました。各地の紛争の映像を織り交 ぜながら、貧困との相関関係について、Paul Collier氏(Oxford大学教授・世銀上級アドバイザー)、Jeffery Sachs氏(Columbia大学教授・MDGs国連特別アドバイザー)、明石康氏などのインタビューをはさんで分析し、その後、それぞれのケースごと に、世銀の取り組みが紹介されていました。
衝撃的で迫力のある映像が効果的に使われていたのが印象的で、上映後は、出席者の多くから溜息 が漏れ、改めて私たちがフィールドから離れて取り組んでいる問題の深刻さを、見せつけられました。こうした世界の紛争と貧困の様子は、日本をはじめとし た、米、英などドナー諸国に住む一般納税者には、なかなか実感・認識しづらいことです。今回の上映では、貧困や紛争などの問題について、映像が視聴者に訴 える強さを、改めて認識させられました。
一方で、援助機関とドナー政府は、ODA額の引き上げを実施/要求するだけでなく、一般納税者に 対しアカウンタビリティーを積極的に果たしていくべきだとも、思いました。プログラムの実施を報告するだけでなく、取り組みの意図や問題意識を、映像を 使って問うことの重要性も感じました。多くの報告書やパンフレットが援助機関から出版されますが、それらに関心をもち理解する納税者は一体どれほどあるの か、以前、実際に自分で作っていて疑問に思ったことがあります。有名人や芸能人を途上国につれた広報目的のテレビ番組はいくつかありますが、今回のドキュ メンタリーのように、途上国の紛争や貧困と先進国の生活との直接の関係を視聴者に問い、問題意識を養うことも大切だと思います。教育チャンネルの中で開発 教育の番組を流すとか、ドキュメンタリー番組を作るなど、異なる対象者ごとに少しでも多くの途上国の現状と先進国の生活の乖離と関係を問う映像が、日本で も放送されるべきだと、常々個人的に思います。この点について、国連フォーラムやメディアの皆さまの率直なご意見も、お聞かせいただければ、光栄です。
さ て、勉強会では上映後に講師から「紛争と開発」の関係と世銀の取り組みについて、解説がありました。世界の最貧国20カ国のうち、80%以上が何らかの紛 争と暴力を経験しているだけでなく、紛争を解決した国の50%が、5年以内にまた紛争状態に戻ってしまう。冷戦後の90年代に各地で紛争が相次ぎ、現在で は、世銀貸付対象国184カ国のうち約1/4が何らかの形で紛争に関係している。こういった背景から、世銀も紛争時におけるDevelopmentの役割 を認識しなおし、ユニットを設立して、研究やアセスメント、国連との協調などを、この10年で進めてきた。東ティモール、アフガニスタン、イラク、リベリ ア、ハイチ、スーダン…と、少しずつlessons learned を生かしながら現場でのプログラム実施と援助協調の経験も積み上げてきている、…などなど。先日、ようやく平和構築委員会も設立され、今後、世銀がどのよ うに国連や他の機関と協調して、この分野で役割を果たしていくか、大変注目されているところであると思います。
質疑応答になると、出席者 からは主に、紛争と貧困の関係について質問がありました。貧困を解決するだけでは紛争や暴力は解決されないのでは; 絶対的貧困ではなく、相対的貧困のあ る社会、マージナライズされた格差、不平等が存在する社会で、選挙や何らかの事件をtriggerとして、紛争が始まることが多い; P5 (Permanent 5: 安保理常任理事国)の国々から貧困国へ流れる武器輸出やビデオの中でも出てきた麻薬やダイヤモンドなどの紛争資金源の問題をまず解決すべきである、などの 意見が相次ぎました。
私も、個人的には、たまたまConflict Assessmentという授業を大学院でとっている傍ら、今回の勉強会に参加したので、大変興味深い議論を伺う機会となりました。授業の中では、世銀の アセスメントだけでなく、DFID、USAID、Clingendael 、UNDPなど、様々な援助機関のアセスメントを比較してきましたが、世銀を含む幾つかの援助機関では、貧困を計る経済指標よりも、社会格差や不平等、 Justice Sector(司法)やSecurity Sector(軍・警察)の発達度、紛争アクターの国内外のリソースを測る指標などが、アセスメントの中に、多く取り上げられています。(JICAにもア セスメントがあると伺いましたが、どのようなアプローチをとっていらっしゃるのでしょうか。)紛争と開発については、貧困だけでなく、ガバナンスと紛争の 関係性も注視すべきだと思います。
また、質疑応答にもありましたが、昨年、世銀とUNDP、UNDGのために開発されたPost- Conflit Needs Assessment(PCNA)が、実際にどのように使われているのか、Conflict AssessmentとNeeds Assessmentとの関係、DPKOのオペレーションとはどのように刷り合わせているのか、今後スーダンやハイチ、コンゴで、どのように世銀と国連が 協調していくのか、具体的にconfrontしている点は何か…などなど、今後も議論を聞かせていただければ幸いです。
最後に、一番印象 に残ったのは、ビデオで出てきたボスニア人のインタビューに対して講師が触れられてた点でした。「あのボスニア人の男性は、『最初に一人、身内が殺された ときはショックだったが、その後次々に殺されて次第に慣れてなんとも思わなくなった』と言っているが、本当は今でも心の傷は深いはず。」 「Psycosocial outputとしての紛争や暴力という点は、これまでneglectされてきた分、triggerにばかり注目がいき、何が根本原因となっているかわかっ ていなかったことも多かった」と、おっしゃっていました。
深い悲しみ(grievances)と欲(greeds)が、憎悪や暴力、紛争 の形になるという研究もあります。ルワンダのガチャチャ裁判や、東ティモール・南アでの真実・受容・和解委員会では、真実を受け止め、許すという一連の心 の過程を通して、国民和解を推進していくプログラムが広く実施されてきました。DDRや4Rsなどの再統合のプログラムと同時に、忘れ去られがちな Truth & ReconciliationやTransitional justice、Psycosocial の問題に焦点を充てたプログラムも、両輪として進行していくことが大切だと思います。
今年の世銀の年次レポートのテーマは、 「Youth」だそうです。児童兵や若い兵士たちの多くは、失業や学校に行けないことで、食べていくために武器を持つことも多いようです。今後も、紛争と 開発、平和構築分野における、世銀の活躍・国連との援助協調に、注目していきたいと思います。
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Sunday, March 5, 2006
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