今回は、私の原点、中学高校の6年間を過ごした桜蔭と、私のコンプレックスについて、少し。どんな学校かと聞かれても、一度もうまく答えられた試しもなく、適当に誤魔化しつづけて、このまま生涯を乗り切ろうと思っていた。しかし度々、「お嬢学校」と呼ばれてしまうと、今度はどう反応していいかわからない。実際は、その優雅で華やかで瀟洒な響きとは、およそ懸け離れているからだ。いいように誤解してもらったまま逃げ切るつもりだったが、最近、良心の呵責に苛まれてきたので、一筆とることにした。母校と卒業生の名誉のため、最初に述べておくと、私はその中で、やる気もなく遊んでばかりいた、落ちこぼれだった。
中高六年一貫の私立の女子高で、一学年250人。文京区水道橋の高台にあり、毎朝、長い急勾配の坂道を登りきらないと、校舎に辿り着けない。「牛乳瓶の底を眼鏡にし、古臭い制服に長靴下と分厚い鞄、およそ世間の女子高生と呼ばれるものとは懸け離れた、宇宙人」…という、桜蔭生の古く硬く垢抜けないイメージを覆そうと、私たちもお洒落には気を使ったが、一言でいえば、地味な学校だ。控え目に言えば、学校も生徒も、質素で堅実で真面目。学費は安い。道徳のほか、礼法の授業があるのが特徴。数学教育に強い。卒業後は毎年約250人中、三分の一が東大、三分の一が医学部、残りがその他の国公私立大学に進学する。理系が多い。医療をはじめ、法曹、会計・税理などの資格系か、大学やメーカーでの研究の道に進む人が、多勢を占める。国連軍縮大使を務めた猪口邦子さん、UNHCRのキャンペーン・ガール?もした女優の菊谷怜、水守亜土などが、卒業生。最近も、何回かAERAで「桜蔭生のその後」と特集が組まれていたらしいが、しかし大方は、あまり表には出ず、地道にこつこつやっている卒業生が多いと聞く。個性としての校風が強いせいか、学生は、卒業後も長らく、愛校心(反校心)が強い。
勉強は厳しい。が、みな自分から進んで学ぶ。校則はそれほど厳しくない。みな言わないでもそれほど外れていかない。なので、私のようにやる気もなく遊んでばかりいれば、拾われることもなく、ただただ落ちこぼれていくだけだった。追試組は、毎回メンバーが決まっていた。半分位が運動部のいつもの面子だったので、それはそれは、法外に楽しいぬるま湯だった。今回は、○科目から追試のInvitationをもらった、と競い合っていた。 ...
通っているときは、早く狭い世界を抜け出して、桜蔭を知らない広い世間を見てみたかった。外に出て、世間に揉まれていくうちに、如何に、遠く離れた同級生たちが、類まれな仲間だったかを、思い知った。どれだけ私が教育を受ける機会を無駄にし、一度自分で貼ったレッテルと無意味なコンプレックスで自分を駄目にしていったか、にも気付いた。アジアやアフリカに行って、尚更そう身にしみた。
特に、ガーナ大学にいた頃だろうか。ぎっしりと学生で詰まった蒸暑い図書館や食堂にて、夜遅くまでランプの明かりで勉強する地元の学生たちに初めて会ったときには、頭が下がった。その頃ガーナでは、試験追込み期間にも、毎晩のように容赦なく、停電が続いた。毎度お馴染みの一夜漬けで済まそうとしていた私になど、堪ったものではない。電気が落ちると毎回、寮中・図書館中で、地元の学生の落胆の声が響く。しかし暫くすると、暗闇の中からぽつりぽつりとランプが灯り始め、みな勉強を再開させる。ちらちらゆらめく蝋燭やランプの明かりで、長い間本を読むのはつらい。しかも、赤道直下なので、日本の熱帯夜とは、比較にならない蒸し暑さだ。それでも変わらず、黙々と続ける学生たちの真剣な面差しは、ずっと私の頭に焼き付いている。
中高で勉強しなかったぶんのツケは、卒業後も現在に至るまで、だいぶ払ってきた。後悔先に立たず、というが、そのまんま。ま、後悔してからが勝負、とでも思いなおし、今更、頑張るしかない。幸か不幸か、凝縮したあの6年間で、知らずうちに叩き込まれた精神と培った仲間だけは、私の財産として残っている。卒業以来会っていなくても、12年ぶりの連絡になっても、何故かみな、時間を感じさせない。6年間で共に育んだ共通の素地がある。久しぶりに会っても、負けないでやってきているので、いつも励まされる。教育の機会に恵まれた分、何かしら社会に還元していきたいという気持ちが残っている。信頼・尊敬する友人に恵まれるというのは、運であってお金では買えない。姉妹みたいだ。
医療か研究、法曹の道に進む仲間が多い中、みな何故か結婚が早い。若くして、道が固まっている研究者組は、特に。一方、プライベートの時間がない女医組は、独身で頑張っている人も多い。仕事と体力のプレッシャーに潰されそうになりながらも、でも必死に負けないでいる。近くにいて、支えてあげられたらと思うが、なかなかそうもいかない。体に気をつけてほしい。かつて夢や志を語り合い、誓い合った証人同志、今は、卒業後にそれぞれの道で世間に磨かれる痛みを、無意識に共有しているのかもしれないとも思う。これからも切磋琢磨して一緒に生きていけたら、この上ない。 - みんな、こんな紹介で、どう?合ってるかしら? これからも、どうぞよろしくね。
Subscribe to:
Post Comments (Atom)
No comments:
Post a Comment