Wednesday, July 13, 2005

29. Reading List for the Summer

今夏の課題図書

これまでクラシックのコンサートには、数えるほどしか行ったことがなかったのに、ヨーロッパ旅行中、器楽部出身のロンドン在住A夫妻に『のだめカンタービレ』という漫画を課題図書として出されて以来、何故か機会にも恵まれている。この漫画が、またあなどれない。面白い。英語版まで発見。私のようなクラシック初心者で、その奥の深さがよくわからなくて、とっつきにかった人には、お勧め。

もうひとつの課題図書は、『沈黙の艦隊』。私が国際関係学部で安全保障みたいなことをちょっと勉強していると話したら、A夫妻といろいろ議論になり、専門外だというのに旦那さんの幅広い知識(漫画による)に、私は気負されてしまった。結果、課題図書として出された。情けない。ちっ、こんなのコロンビアでは習わなかったもん。

そして、先日の友人の式では、食に関わるお仕事をしていらっしゃる新郎が、挨拶の中で引用した言葉も、漫画『ぽっかぽか』から。「子供はご飯を食べながら、愛情も一緒に食べている」という言葉が、紹介された。座右の銘を故事・諺から出す人は多いが、漫画とはこれまた粋な。シンプルでいい言葉。新郎の、お仕事に対する哲学と情熱も素直に伝わってきた。

しかし、みんな、よく読んでるなーと、感心した。たぶん、彼らの大学の教科書も仕事の報告書も、漫画に違いない。私も昔は漫画をよく読んでいたが、大学に入ってからは、ぱったり止まってしまった。もったいなかった、と今になって思う。特にこの半年間は大学で、睡眠薬のよく効いた法律関係の英語の本ばかり読まされたので、久々の日本の漫画は、その単純でいて読者を引き込む圧倒的な魔力が、とても新鮮だった。久しぶりに改めて、漫画のこの力とシンプルさ、時にはくだらなさが大切なんだよなー、とも思い出した。新聞や専門書だけでなく、漫画、小説、雑誌まで、幅広く読むことの大切さも、思い出した。

私たちの世代は、つくづく漫画で雑学を得て育ったのだと思う。実を言えば私も、NYへのほのかな憧れは、中学生以来の我が愛読書、『カリフォルニア物語』 (NYが主な舞台になっている)と『BANANA FISH』 から始まった。余談だが、東京の父子家庭の都会生活を描く、愛すべき漫画『Papa told me』も、中学のときから私を形づくってきた。今でも帰国のたびに新刊をチェックしている唯一の漫画。

そしてその後は、漫画から小説や映画へと移ってしまった。『BANANA FISH』から、愛してやまないサリンジャーに辿り着き、フィツジェラルドカポーティウディ・アレンなど、お気に入りだった作家たちの小説や映画へと読み進めていった。彼らの作品はたまたま、NYを舞台にした話が多かった。私とは異なる時代と社会を生きているのに、文章から伝わってくるそれぞれの瑞々しい感性が新鮮で、気晴らしによく読んだり見たりした。

その頃は、まさか将来、自分がNYに住むことになるとは、夢にも思わなかった。好きになった小説や漫画たちも、たまたまみんなNYを舞台にしていただけで、お話の中の遠い世界として、特に意識したこともなかった。

あれから10年近くがたち、今では、ストーリーさえ忘れてしまった作品が多い。でも。ただひとつ、中学生のときに読んだ、先の『カリフォルニア物語』だけは、今でもよく覚えている。NYは、雪に閉ざされた孤独な都会として、それはそれで憧れ、何度も、繰り返し繰り返し、読み返した漫画だ。今から考えれてみれば、ethnicityや社会に対する視点は、この作家から学んだところが大きい。

最近になって、とうに忘れていた古い記憶を掘り起こし、ああ、こうやってみんな繋がっていくものなのか、と、初めて気付いた。人生とは不可思議だ。

課題図書。日本では、結局重いので買えなかった。早いとこ、手に入れないと、夏休みが終わってしまう…。先生、どうしよう…。

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